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天空の村にジャガイモの花が咲く

上越新幹線、燕三条駅から車で20分あまり。

日本一の大河・信濃川と、その支流の中ノ口川が作る三角州に果樹のふるさと「白根地区(現在は新潟市南区)」はある。 越後平野に初雪が舞う頃、一年を締めくくるある特別な果物の出荷が最盛期をむかえる。幻の西洋なしと呼ばれる「ル レクチエ」である。 青山淳彦(あおやま・あつひこ)さん(53歳)は、22歳のときに専業農家になった。生まれも育ちも白根である。

現在、果樹だけで1.3ヘクタールの畑を持ち、桃や和梨などを栽培しているが、中でも心血を注いているのがル レクチエである。11月下旬。降雪の予報も聞こえる初冬の果樹畑に案内してもらった。昔、この場所は田んぼだったという。長靴の底で大地を確かめると適度な粘性がある。

そもそも、この地域で果樹や稲作が盛んなのには理由がある。古くから信濃川の氾濫のたびに川底の土砂が堆積して沖積平野が作られた。その肥沃な土壌が、果樹にも稲作にも最適なのだ。早朝、信濃川の土手に立つと海(日本海)で生まれた寒気が、下流から川を伝ってこちらに迫ってきた。この寒波と太陽によって温められた大地との寒暖の差もまた農業にとっては貴重な天の恵みである。

「もう、剪定をしなければなりません。収穫を終えた木々は、余計な枝を切ることで来年に備えます。このあたりは1メートル強の積雪がありますので、それまでにやらないと大変です。果樹は稲作と違って仕事を休む暇がありません」

そう言って青山さんは、黄色く色づいた10センチほどの葉っぱを払った。今にも降り出しそうな鈍色の空。雪暮れの枯野は物哀しい。しかし、春先にはこの風景は一変し、白根地区は桃源郷のようだという。桃や梨、ぶどう、などの果樹が一斉に花を咲かせるのだ。もちろん、ル レクチエも蘭によく似た白い可憐な花を吹く。そして、梅雨が終わり初夏を迎えると、早生の桃にはじまって、次々と果物の出荷がはじまる。一年のトリ、最後に収穫されるのがル レクチエという訳だ。

「果樹栽培の大敵は天候です。一年の最後に収穫されるということは、一番長くそれらの影響を受けるということです。だから、梅雨に入る前に、雨が入らないように余計な蕾を落とし、残った蕾にひとつひとつ手作業で袋をかぶせます。枝に果実が実ってからは、台風や大雨がこないように願うだけです」  

もともと、この地域に台風はめったにやってこなかったが、最近では異常気象によって季節外れの強風や集中豪雨に見舞われる。とくに、今年は大雨や猛暑での被害が多い悪天候もあった。農業は自然が相手というが、正確には自然を相手にはできない。白根の人々は、こうした自然との折り合いを図りながら、長い年月をかけてこの地を果樹の故郷として産地化させてきた。

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